株式市場探検

日本株の売買・研究の備忘録。結構テキトーです。

買いと売りの違い考察

買いと売りの違いとは

 

買いでとるか、売りでとるか、どちらが得なのか。いくつか考察をしてみる。

 

売りと買いはどちらが多いのだろうか。

東証の投資主体別売買動向を見ると、年間で買い数量と売り数量はあまり変わらない。ほぼ同値である。それでは買いと売りの何が違うのか?

 

 

①ポテンシャルの違い

買いのポテンシャルは世界中のすべてのキャッシュであるため実質的に無限であると考えられる。日本の個人金融資産だけでも、900兆円のキャッシュが眠っている。株式時価総額の1.5倍である。一方、売りのポテンシャルは既存株主からしか基本的にでてこないため、会社の時価総額分がマックスであり有限である。理論的に、時価総額以上のキャッシュをもっていれば、すべての株を買うことができるため、時価総額的には買い方は損をしない。(換金可能かどうかはさておき、)

 

つまり、買いポジを持ち越した場合と売りポジを持ち越した場合のリスクは全然違う。例えば、買いポジを持ち越した場合、損する可能性のある金額の最大値は上場廃止した時で投資金額を全額損するまで(それでも純資産の割り当てがあるが、)、つまり、株主の責任は有限責任である。しかし、売りポジを持ち越すと、買いポテンシャルは無限大のため、株価が連続ストップ高などで数倍になれば、全額+借金まで背負うことになる。よって、買いポジの持ち越しリスクは有限、売りポジの持ち越しリスクは無限である。

 

「買いは家まで売りは命まで」という格言もある。

 

②買いと売りの心理の違い

買いはキャッシュを株に変える。一方、売り方は株をキャッシュに変える。買い方は別にその株を買わなくても損しない一方で、売り方は株価が下落をすると損してしまう。心理状態としては、買い方は冷静でいることができる一方で、売り方はリスクと常に隣り合わせのため、プレッシャーがかかる。基本的に、買い方(キャッシュポジション)よりも売り方(ロングポジション)の方が狼狽しやすい。

 

以上から、株価が上がる局面では買い方は冷静なので徐々にせりあがり、下落する局面では売り方にはプレッシャーがかかり狼狽してしまうため、スっと一瞬のうちに下落してしまう傾向がある。つまり、次の結論が得られる。「株価が上昇局面の方が時間が長く、株価が下落局面の方が時間が短い」しかし、短期に目を向けると、この傾向が逆になることが多い気がする。

 

③買いと売りの手数料の違い

株でキャピタルゲインインカムゲインもだが)を得るためには、基本的に買い→売りでしか取れない。売りからとるためには、貸株手数料や金利、場合によっては逆日歩が必要となり、その分余計に損する。よって、システム的側面から考えると、株価がランダムウォークするとしても、買い方の方が有利である。

 

④天井形成、底形成の違い

株価は天井や底を形成しながら波を描く。しかし、天井形成はリバモアも言うように、正確に当てることはほぼ不可能である。PBR50なんてこともしばしばまかり通ってしまう。これは、買いのポテンシャルは実質的に無限ということからも直感的に理解できる。無形価値が市場でどのくらい評価されて思惑買いされるかは誰にも言い当てられないのである。一方、底形成はある程度予想が可能である。例えば、以下のような場合、売りが減るが、この逆の場合、買いが減るかどうかはわからない。

4-1:株価の絶対値が低くなった場合。これは、株価は1円より下には下がらないため、低位株の場合、株価が1円に近付くにつれ売り枚数が減る。

4-2:PBR1に近づいた場合。もちろんPBR1割れすることも多々あるし粉飾決算もある。しかし、解散価値であるPBR1というのは、一つの会社の安全性指標であることも確かである。資産が潤沢にある会社の株価が暴落しても暴落後PBR1前後であれば、ここが底だろうと予想をつけることができる。

4-3:浮動株が実需買いで吸い上げられる場合。これは需給とも関連してくるが、長期筋の買いで浮動株が少なくなればなるほど売りが少なくなるため株価は上がりやすい。

 

 

⑤意図的か偶発的かの違い

経営陣は株価の下落を自社株買いなどで意図的に止めることができるし、突然買収が発表されたりもする。しかし、天井を意図的に止める経営陣(MSワラントの問題はあるが)はいないだろう。特に暴落型の天井は、偶発的事故によって引き起こされることが多いため、予想できない。ファンドの空売りなどもあるが、いつ来るかは予想できないし、大口が空売りを仕掛けるときは、全体として下方向トレンドになりそうなときである気がする。結局予想できない。

 

⑥買いで入る人数と売りで入る人数の違い

売りは怖いと思っている人も多いから、基本的に買いで入る人の方が圧倒的に多い。よって、一般的に、投資家や投機家の株の売買プロセスは、買い→時間経過→売りとなる。よって、多くの人は、上昇圧力となってから下落圧力となる。よって、「買いで入る人が圧倒的」という前提から、出来高から上昇圧力と下落圧力と投機筋の時間軸の関係を読み取れば、ある程度の需給読みが可能となる。

 

⑦期日が限定されているかどうかの違い

現物の買い方は無限にロングできるが、ショートは反対決済をする期限がある。つまり、超長期目線の場合、ロングするしかない。また、超長期目線がロングをするとき、浮動株の吸い上げが行われ、供給が少なくなるため、それも上昇に加担する要因となる。

 

⑧政府や中央銀行が救済するかどうかの違い

リーマンショック以上の経済危機が生じたとする。世界中の金融機関をはじめ、誰もが資金が足りなくなる。株式市場から資金が引きあげられる。それを見た投資家たちも下落を恐れ、さらに資金を引き揚げる。「投資なんかにお金を回せるか!」と言わんばかりに。IT企業やインフラ会社、生活必需品会社までもが資金繰りが困難になる。そのままだとどうなるか。経済は崩壊する。回るべきところにお金が回らないのだ。市民は、衣食住すら満足に手に入らなくなる。企業はさらに経営が困難になる。失業者、自殺者が大量発生する。ディストピア的な世界になる。

それを防ぐためにはどうするのか。政府や中央銀行、あるいは資金力のある金融機関が結託し、超多額のお金を工面し市場救済する他なかろう。